クマ坊の日記

人材育成と本とサッカーが中心のブログです

京都花街の経営学

 

京都花街の経営学

京都花街の経営学

 

 

内容はマニアックです。舞子さんがどうやって1人前になるかが書かれています。「舞子さん」「京都」「芸の世界」本を読む前は浪花節の世界かなと勝手に想像していました。しかし、実際はかなり合理的な人材育成の仕組みができあがっており驚きました。

 

1975年までに京都の舞子さんはわずか28人にまで減少しました。このままでは舞子さんがいなくなってしまうと危機感を抱いた京都の花街は、それまで地元の京都出身者や芸事の経験者しか許していなかった舞子さんを、全国から募集することにしました。現在の舞子さんの多くは地方出身者です。中学を卒業した女性を1年間でプロの舞子さんに育成するのです。1年前まで中学生だった女の子が、1年後におもてなしのプロとしてデビューするってすごくないですか?

 

1年間で育成するには理由があります。舞子さんをやれるのは20歳前後です。つまり15歳から入門しても、舞子さんとして活動できるのは5年間〜6年間だそうです。舞子さんが所属するのは「置屋」です。置屋は芸能プロダクションだと思ってください。舞子さんが着る衣装等はこの置屋さんが用意します。もちろん舞子さんの着物等は高価です。つまり置屋さんは初期投資しているんですね。投資は当然回収しなくてはいけません。だから1年間で舞子さんを育成するんです。早くデビューさせることで、舞子として活躍できる期間を確保します。極めて合理的ですよね。

 

そして育成する仕組みも、極めて合理的に設計されています。大きく3つの仕掛けがあります。

 

①芸は各分野の専門家に学べる学校制度

唄・踊り・華道・茶道など身につけるべき技能が数多くあります。これらを学ぶ学校があります。指導役は、各分野の第一人者。最高の先生に最高の授業の環境が整えられています。

 

②学んだ事を披露できる場がある

毎年4月から5月に都踊りという催しが開催されます。舞子さんが学んできた歌や踊りをお客様の前で披露する場があります。真剣勝負の舞台です。これは学習理論的にも理に叶っています。いくら最高の授業を受けても、それを実践する場がなければ技を身につけることも、向上させることもできません。そして単なる場の提供ではなく、伝統的な興行の場でもあるのです。しっかり投資回収できるようになっています。ちゃっかりしています。

 

③街ぐるみで、大勢の人が育成に関わる

 新人の舞子さんには、指導役の芸妓さんが必ず1人つきます。舞子さんの育成責任を持ちます。公私共に面倒をみることになるので、もっと絆は深いんでしょうね。ただ、指導役1人に育成を任せるわけではありません。街中の人が指導に関わります。その為の工夫も合理的です。具体的には、舞子さんは育成時期によって髪型や帯の長さが違うんです。だから、舞子さんの格好を見れば、「まだ舞子の修行を始めて日が浅い」とか、「半年ぐらい経ってるな」というのが一目で分かるのです。そうすると、周囲もその舞子さんの成長段階に合わせた指導ができるんです。

 

しかし、ここで一つ疑問が生まれます。なんで、直接の知り合いでない人が舞子さんを指導するんだ?そんなにおせっかいな人が多い街なんでしょうか?実はここにも、街ぐるみで指導する合理的な理由があるのです。

 

この本を通して初めて知ったのですが、芸妓さん、舞子さんはプロジェクト単位で仕事をするそうです。もっと詳しく説明しますと、お客様の希望にあわせて置屋(芸能プロダクション〕がキャストを決定します。バラエティ番組に例えると、このお座敷は、メインの司会はジャニーズの中居くん。芸人は、吉本の博多華丸大吉人力舎からザキヤマと児島。ホリプロから石原さとみをゲストとして招く。という感じでチームが組まれます。当然、事前に打ち合わせや練習はできません。その宴席の空気を読みながら即席チームで最高のおもてなしを提供するのが仕事です。毎日がライブですよね。いつ誰と一緒にお座敷に上がるか分からないのです。だからこそ、若い舞子を育てるのです。お座敷の成功にはメンバー全員の力が必要ですから。

 

舞子さんの人材育成は、ミルフィーユのように様々な仕掛けが幾重にも張り巡らせてあります。普段、企業の人材育成を生業にしている私から見ても見事です。もちろん、伝統がある京都という土地柄。そもそも舞子さんに憧れて修行しているのでモチベーションが高いので育成しやすいという背景もあると思います。でも、それを差し引いても素晴らしいと感じます。

 

このテーマを研究しようと考えた西尾先生のセンスの良さには脱帽です。実際、京都花街の置屋さんに住み込んで、丹念に調査された行動力にも敬意を表してやみません。

 

最後に一言、舞子さんと「金毘羅舟々」してみたい!

 


こんぴら converted