クマ坊の日記

人材育成とビジネスとサッカーが中心のブログです

【キャリア】仕事を干された時の話

10年前に仕事を干されたことがあります。私が所属するコンサルティングファームはどれだけ大きなクライアントで、どれだけ大きな金額のプロジェクトをどれだけ数多く受注するかが評価されます。当時はプロジェクトの質も数も社内ではNO1でした。

 

当時、社内で大きなプロジェクトが立ち上がるのでそれを任せたいと上司から言われました。ついては今まで手がけたプロジェクトは他のメンバーに譲って欲しいとのこと。新しいプロジェクトに興味もあったし、会社からの要請だったので断わる理由もありませんでした。しかし、立ち上がるはずのプロジェクトは私が携わる前に頓挫してしまいました。残ったのは、膨大なノルマのみ。当時は仕事を奪われ、ゼロからの新規開拓を強いられる毎日でした。

 

入社以来、仕事=人生だったので、その時は「会社に裏切られた」という思いが強かったです。それでも、仕事には自信があったので「なんとかしてやる!」と頑張りました。でも、そんなに仕事は甘くありません。うまくいきません。「元々、人の役に立ちたいから人材育成の仕事をしたいのに、ノルマの数字を追いかける。。。」なんか精神的な拠り所が突然消えてしまった感覚でした。」だんだんと自己効力感も失い、会社を恨み、上司を恨み、自分自身の不甲斐なさを嘆き。。。ある日、鏡で自分の顔を見たら死神みたいな暗い顔でした。

 

このままでは精神的におかしくなると思い10日間の休暇を7月に急遽取りました。休暇を取って向かったのはニューヨーク。学生時代にヨーロッパはよく旅行したので、まだ行ったことのないアメリカに行こう。松井秀喜ヤンキースに移籍したので見に行こうというのがニューヨークへ渡った理由でした。

 

このニューヨークの旅で、私は4人の日本人と出会いました。1人目は行きの飛行機で出会った私より8歳歳下の青年。映画パッチアダムスに憧れて、「これからパッチアダムスのモデルになった病院に学びに行く」と希望に満ち溢れた表情で語っていました。

 

2人目はジャズバーで出会った老人。ジャズに憧れて50年前に渡米。今はアメリカ国籍を取得。ビックバンドでトランペットを奏でるプロミュージシャン。その方が「なんでアメリカのミュージカルやジャズがNo.1であるか分かりますか?どの国のミュージカルでも主役の人のレベルは変わりません。違いはNO2以下の層が厚いんです。世界中からエンターテイメントでの成功を夢見る人たちが集まる街なんです」と教えてくれました。

 

3人目は、ニューヨークで初めて個展を開く為に来た女性アーティスト。彼女は「日本的な美を海外で伝えたいけど、日本の美はおくゆかしいのが本質。だからアピールすることで伝えたいものが変容するのが不安。でも、チャレンジしに来た」と話ていました。

 

そして、最後はボールパークで見た松井秀喜。私が来る前は、ゴロキングと揶揄されていました。しかし、目の前で美しいホームランを放ちました。球場はスタンディングオベーション。鳥肌が立ちました。世界最高峰の舞台で日本から来たスラッガーは1人奮闘していました。

 

4人の日本人と出会い、なんて自分は器の小さな男なんだと思いました。自分は恵まれている。好きな仕事に携われている。目先の結果や小さなプライドに囚われすぎていました。それに、仕事なんて人生の一部に過ぎない。自分のことは分かっているようで一番分かっていないもんです。

 

ニューヨークで私は元気をもらい回復しました。仕事もそれまで以上に頑張りました。仕事以外も楽しむようになりました。この時期の最大の成果は、婚活して今の妻と出会ったことです。

 

仕事を干された経験で、私は人生でたくさんの「もっと大切なこと」を見つけることができました。

 

仕事で苦しかった経験はマネジメントをする上でも大変役立っています。その人の能力以前に、メンバーが働き甲斐のある環境を整えることがいかに大切か。仕事が上手くいかない人の気持ちとか。何が自分がやりたい仕事なのかとか。挫折を味話なかったら、そんなメンバーの気持ちも考えない最低なマネジャーになっていたと思います。

 

仕事が上手くいかない。職場の人間関係で苦しんでいる。そんな人は、仕事と一旦距離を置くのも一考だと思います。

 

人間万事塞翁が馬って奴ですかね。